普段は映画の色々をこちらでお知らせしていますが、今日は猫のトラの事を。
私(斎藤)が17年7ヶ月前に出会ったトラ。
映像工房NOBUは内田、斎藤、トラの3人だったのだと改めて思いました。
トラは、3月2日の深夜に天国に旅立ちました。
17歳と7ヶ月でした。
野良子猫を拾ってから17年と7ヶ月共に過ごしたトラのことを書きます。
私はちょっと忘れっぽいところもあるので、トラの事、だいじな事、忘れない為にも。
そして、目が見えず歩けないシニア猫の介護を通して感じた事を。
もう、あれから、わんわん大泣きしています。
内田と共に、大のおとなが二人揃ってわんわん大泣き。
笑っちゃうほど泣いています。
でも、それで良いと最近思います。
トラが当たり前にいた場所がぽっかり空いて、あの温かくて柔らかい体温がいなくなったのだから仕方ない。
一つ良い言葉を知りました。
「日にち薬」
どんな悲しみや苦しみでも月日を経ることによって、悲しみを乗り越える力を与えてくれるという意味だそうです。
猫が死んじゃったくらいで?と思われるかもしれませんが、それだけ、私にとってトラは大きな存在、大事な家族だったのです。
トラを可愛がってくれたり、お世話してくれたり、私の話で知ってくれたり、SNSで知ってくれたり色々な方々がトラを見守ってくれました。本当にありがとうございます。
そして、トラが亡くなった事を知って、お電話くれた方、メールくれた方、温かい言葉を紡いでくれた方、励ましてくれた方、飲みに連れてってくれた方、気にかけて下さって、みなさんの優しさが沁みまくりました。優しい方々に囲まれて私は幸せ者です。本当にありがとうございます。
17年と7ヶ月前に、トラは当時住んでいたアパート前にあるパチンコ屋の花壇に一人で大鳴きしていました。
3Fの窓から声がする方に目を凝らすと、ミャーミャー!!と鳴いてる声に通り過ぎる人が反応していましたが、皆一様に見に行っては去るので、あと3人来て、誰も拾わなかったら行ってみようと決めて、3人目が去った時に見に行きました。
そこには掌サイズの小さい目も開いていない灰色の汚い毛だらけがミャーミャー!!と叫んでるので、手を伸ばしたら、掌にすごすごと乗ってくるというか這ってくる感じで、掌に乗った途端ピタっと鳴き止みました。
家に戻って明るいところで見ると、とても汚れているし、一言も鳴かなくなったので、まさか、これはネズミか?!死んじゃったか?!と内心ビビりました。
夜間診察していた病院で診てもらい、その時先生に言われたのが、生後1週間~10日程度であり、この汚れた毛の塊は子猫であり、毛は灰色でなく、茶トラ白であるという事でした。
汚れていたのは、どういう訳か分からないけど生コンクリートを踏んだとか?という見解で、そして、瀕死なので、すぐに死んじゃうかも、運が良ければ助かるという話でした。
とにかく、生きて欲しいので、出来る限りの診察をお願いしました。
当時の私は、ペットに関しての知識はなく、猫は野良が気楽で良いのでは。動物は自由が一番。みたいに無知だったので、先生には「治ったら、また野に放った方が良いですよね」と聞いたところ、「野良だとすぐに死んじゃうから、出来たら飼って欲しい」と言われました。
えーどうしよう。昔から重度の猫アレルギーだし。くしゃみと鼻水と涙がヤバいし、動物NGなアパートだし。
でも、野良だと生きていくのが困難……ならば!覚悟して、飼うしかない!!と思ったのです。
でも実は、それ以前に、トラが掌に乗ってきた時点で、非日常の何か起きる感じにワクワクしていたのです。
ラピュタで言えば、シータが空から降りてきたのをパズーがワクワクしたって言った時のように。ワクワク。ヤバい、可愛いかも。初めての猫。ヤバい、どうしよ。ワクワク!!みたいな。
そんなこんなで、トラとの生活がスタートしました。
とても不思議なのが、飼うと決めたその日から、猫アレルギーがピタッとなくなったのです。これ本当に不思議です。
拾ったばかりの瀕死の頃は、毎日、数時間おきにミルクをあげて、痙攣が酷かったので、その度に確か砂糖水をあげたり、病院に連絡して、対応を聞いたり、点滴しに診察に連れてったりしました。
だんだんと元気になり、そのうち、目が開きヨチヨチと歩けるようになり、小さくて、柔らかくて、この世のものと思えぬほど可愛い。
大きくなるとめちゃくちゃ活発で、私の手をおもちゃにして、腕が流血になる事もしょっちゅう。
気が強く抱っこ嫌いでしたが、あまりに可愛いもんで、しつこい私はいつも、鍵しっぽをブンブンしてウーーッて怒られていました。
けど、かわいい。なので、怒られてもなんでも良い。どんなに怒られようと、こんなに大好きって人間じゃあり得ないね。まさに下僕とは、このこと…きっと、猫飼ってる方には伝わりますね。
拾った日の先生の診察は、まるで預言者のようで的中しました。
言われていたのは、トラは将来、目が見えなくなり、歩けなくなる、と。
本当にその通りになりました。
多分、トラがネズミのおもちゃで遊ばなくなり、よく壁にぶつかるようになった頃だから、10才前後位から目が見えなくなったのだと思います。
ご飯やトイレの場所までのルートは決まっているし、よく寝るようにはなったけど、
それでも遊んだり、上手いこと生活していました。
いつ目が完全に見えなくなったのかなと、見えなくなる時は悲しかったのかなとか、
トラを見ながら切なくなりましたが、見えなくなっても、ご飯はしっかり食べるし、寝るし、遊ぶ。
3年前のトラが14才の時、映画『女たち』の撮影準備兼ねて1ヶ月程遠方に行く為、
色々交渉して、トラを連れて行く事が出来ました。
ペットホテルは介護有りは預かってくれないし、病院は入院という形でしか無理だし、
何より金銭的にも厳しい。
高齢の親に面倒をお願いするのは無理だし、介護も必要だったので、連れて行く事が出来たのは本当に助かりました。
トラと共に生活しながら、映画の撮影が出来て、キャスト、スタッフの方々、
トラを受け入れてくれた皆様には本当に感謝しております。
猫好きさんが多かったのもあって、皆さんとても可愛がってくれて本当に嬉しかったです。
特に俳優の筒井茄奈子さんはトラの面倒をよく見てくれました。
なすちゃんが可愛い可愛いとトラを抱っこする姿を思い出します。
不思議なのが、トラはその時から全く歩かなくなりました。
すぐに転んだり、足がもつれたりと歩けなくなる前兆はずっと前からありました。
完全に歩かなくなったのが、映画の撮影で連れてきてからでした。
それからは、排泄する為のマッサージを内田と共にやったり、寝たきり生活は3年間でした。
昨年の2月に肝臓に腫瘤を発見し、昨年末には腎臓病を、新年明けてからは糖尿病にも。
特に歩けなくなってからは、何をするにも私達の介助が必要だったので、
それもあって、ここ3年間は本当に甘えん坊に変身しました。
毎日、ご飯をあげて、マッサージして、排泄して、寝返りして、抱っこして。
長く家を空ける時は、季節的には車が暑くならない真冬しか無理でしたが、
寝たきりだと可哀想なので、内田と2人で行動する撮影などは出来る範囲で連れて行ったり。
排泄がうまく出来ないので、お漏らしや汚れる事もあった為、若い頃は大嫌いだったシャンプーが、晩年は大好きに変わっていました。
シャンプーのマッサージとドライヤーがたまらなく気持ち良かったみたいで、うっとりしていました。
昨年末の頃から、トラの体温が低くなってしまい、マッサージやドライヤー、コタツ、あったかい毛布、色々調べては試せる事を沢山やりましたが、結局、一番トラが温かくなるのは、私と一緒に寝る時だったので、亡くなるまで毎日一緒に寝る事にしました。
全盛期の6kgから晩年は3kg前後まで体重が落ちたので、おしめを取って抱っこした時の骨張ったお尻周りが未だに手の感触に残っています。
それでもトラは一生懸命、美味しくない腎臓や糖尿病ケアのご飯を食べてくれました。
昨年末からは、点滴の為にほぼ毎日の通院。
どうしても行けない日に、数回ですがドキドキしながら自宅でカテーテルをやったり。
最期は私の腕の中で亡くなりました。
内田が病院に慌てて電話している最中、私はトラを抱っこしていたのですが、
なんていうか、亡くなる時、不思議な感じでした。
トラが目を大きく開けて、私を見ているようで。
もしかしたら、目が見えたり、少し元気になったかのように錯覚した。
ちょっと子供っぽい顔に見えた後に、力尽きました。
線香花火が最期に勢いよく燃える感じ。
元気良くお別れを言ったのかな。不思議だった。
駆け足で綴ったけど、これがトラの猫生です。
トラが私達に与えてくれたのは沢山あるけど、共に生きる幸せと、
私と内田を猫の世界に引き入れてくれた事。
猫ってこんな凄いんだと。猫と一緒に生きるってこんなに幸せなんだと。
どんなに辛い事があっても、帰ってトラを抱きしめて、うわーんってやってたな~と。
もしかしたら、ペットロスで悲しい思いをされた方にとっては辛い話かもしれません。
でも、トラが目が見えなくても歩けなくなっても一生懸命最後まで力を振り絞って、
懸命に生きた姿は、何よりも力強く、命の尊さを教えてくれました。
いつか先に逝ってしまうのは分かっているし、それは猛烈に猛烈に悲しいけれど、
ちゃんと見送りを果たすのは、私達人間の勤めだなと思います。
それと、子猫とか若い頃が可愛いのは当たり前だけど、シニア猫で毛ツヤが悪くなったり、介護が必用になっても、どんな姿でも本当に可愛いです。可愛い。
信じられんくらい可愛い。猫。世界中の猫が可愛い。たまらん。
トラは幸せだねと言ってもらえたけど、私達がトラに幸せにしてもらっていました。
トラ、またいつか、会おうね。生まれ変わってまた出会えますように。
長文を読んでいただいて、ありがとうございます。
斎藤文
10年前位からブラッシングした時に取れたトラの毛を集めて丸めたトラ玉。
今もトラの香りがほのかに。
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